こんにちは。
以前勤務していた病院で、
出会った患者さんの話です。
彼女は、Aさんとします。
Aさんと、亡くなった旦那さんは、
建築会社を経営していました。
地元でも有名な、羽振りのイイご家庭だったのです。
ちなみに、その地域では、
「財閥」って呼ばれていましたっけ。
北海道の北の港町で、
昭和のお金持ちを体現するような、
大豪邸に住んでいたそうです。
でも私が出会った頃は、もう廃業されていて、
小さなマンションに住んでおられました。
退院の準備のために、
Aさんのお家にお伺いしたときのことです。
お部屋、モノがなかったです。
すっきり、がらん。
必要な家具はあります。
だけど、本当に最小限。
ソファーはなくて、ひとり用のこたつ椅子。
お年寄りのお家にありがちな、
大型の食器棚や壁の飾り物もないので、
手すりを付け放題・置き放題でした。
もう15年くらい前のことです。
そのときは、へぇ~と思っただけですが、
Aさんは、ミニマリストだったんでしょうね。
それも、自分で意識して変化した方でした。
Aさんは、こんなふうに言っていました。
主人はもう亡くなったし、
子どもは所帯を持ったし、
大きな家は、分不相応なの。
掃除するだけで、一日終わるから、
掃除婦の生活になるよ。
それも、タダでね。
それ、バカみたいでしょ。
服も、靴も、ハンカチも、
いっぱい手放したんだからぁ(*^▽^*)
そのときは、お金持ちなのに変わってるな、
へぇ~と思っただけでしたが、
今は、その方のかっこよさがわかるようになりました。
Aさんは、足を骨折して、
これからは歩行器が必要だったはず。
でも、その歩行器がすんなり使えたのは、
家具が少なくて、空間がたっぷりあったから。
物だらけのご家庭だと、
身体が不自由になって帰れないってこと、
ホントよくあります。
歩行器も、車椅子も、場所を取りますからね。
それが自宅で使えなくて、
施設に行くという選択は、
けっこうよくある話です。
Aさんは、結局のところ、
家に帰ることも、
施設に行くことも、
どちらの選択肢も持っていたのでした。
無性に、Aさんに会いたいです。