こんにちは、しゅりです。
医療機関で専門職をしていまして、厳密に言うと、所属部署は室長と私の二人です。
私たちの仕事は、忙しいときは殺人的ですが、そうでもないときはのんびりです。
なので、世間話をしている時間もけっこうあります(以前の総合病院では考えられなかったです)。
ところで、室長は食道楽ですが、偏食でめんどくさがりです。
美味しいものに詳しいし、数年前までは食べ歩きも多かったようですが、今はもっぱらコストコ食品です。
そんな室長が言うのです。
あぁ、そら豆が食べたい(*’▽’)
北海道民にとって、そら豆はハイカラ食品★でした
子どもの頃は、そら豆を食べた記憶がありません。
近所のスーパーにもなかったのではないかしらと思います。
学生の頃、「腎臓はそら豆の形」教わりましたが、あまりピンと来ていませんでした。
でもその直後、友人宅での飲み会でそら豆を食べまして、「あぁ、これが」と思ったのです。
そのときは、枝豆のように塩ゆでしたそら豆を冷凍したもので、自然解凍して、ビールのつまみにしましたっけ。枝豆よりの繊細な味のように感じて、私はこちらの方が好きでした。
いやいや、そら豆のポテンシャルは、それじゃない( ゚Д゚)
室長は言います。
でも「冷凍でもなかなか美味しい、しかも大きい枝豆のような豆」
これが私のイメージだったのでした。
「これが一番だったな」と言ったひと
川上弘美という作家をご存知ですか。
静かだけど、無機質じゃない。透明だけど、無色じゃない感じと言いますか、好きな作家さんなのです。
彼女の「花野」という小説にそら豆が出てきます。それは、こんな話です。
ふとした瞬間に、主人公の前に現れるようになったのは、交通事故で即死した叔父だった。妻や娘、好きだった相撲や政治のこと、主人公に尋ねては、ふわりと消えてしまう。
生き返りたいと漏らしたり、気持ちに嘘をつくとあっちの世界に戻ってしまうんだと言っていた叔父だが、あるとき「もう、出ないことにした」と言うのです。
それでは。わたしは言った。最後の午餐をお願いしましょう。
(中略)
叔父さんの好物を。わたしが答えると、叔父は1分ほど考えてから、いかにもそれらしい様子で手を大きく一振りした。花野に、机と椅子があらわれた。机の上には、あわびと海鼠と葛切りとざくろとそら豆が並んでいた。
「これだ」叔父は少し恥ずかしそうに言い、座った。
「さあ、食べたまえ」
(中略)
最後にそら豆が残った。叔父は、わたしの食べるさまをじっと見ている。
「そら豆がいちばんだったな、やはり」頷きながら言う。
「いちばんだ」
「花野」、川上弘美「神様」より
あぁ、そういえば室長もそら豆が好きなんだと思いだしたら、急に食べたくなりました。
もう学生ではありませんので、ちょっと手を加えてグラタンでも作ろうか、でもシンプルに塩コショウで炒めようか、楽しくなってきます。
ちなみに室長は、さやごと丸焼きにしたら最高と言いますが、どうなんでしょうね。