もう覚えているひとは少なくなりましたが、
札幌に菊水部落・サムライ部落と呼ばれた地域がありました。
その日暮らしで、貧しさの底辺にある人々、
小さな旅芸人の一族、
住所や戸籍のない生活を送るひと。
そんな地域です。
もう80年以上前に、そこで生まれたひとを
担当していたことがあります。
金森さん(仮名)、
小柄なおじいちゃんでした。
金で解決できるなら、安いもんだ
![](https://i0.wp.com/kurochya2bottan.com/wp-content/uploads/2020/08/photo-1481882563558-a1b9f5f7744a.jpg?resize=300%2C200&ssl=1)
金森さんは、独り身でした。
廃品回収や古物商の会社を経営して、
けっこう羽振りのイイ様子もありましたが、
俺みたいなモンは、
結婚なんて贅沢品なんだぜ
と、言うのです。
俺は、生まれがアレだからさ、
結婚なんてできないのよ。
どこで生まれたかって、
絶対変えられないぜ。
いくら金を積んでもさ。
今はもう、サムライ部落なんて、
知っている人も少ないですが、
金森さんの若いころは、
ここの出身者というだけで、
できないことがたくさんあったと言うのです。
お金をたくさん用意できても、
門前払いされたようです。
恋人との結婚、まっとうな就職先、銀行の適正な融資・・・
まるで、
お前には、そんな権利はないと
言われているような気分だった。
糸のように細い目の金森さん、
いつも笑っているような表情が、
その時は泣いているように見えました。
お金で解決できる、優しい世界
![](https://i0.wp.com/kurochya2bottan.com/wp-content/uploads/2020/08/photo-1582308722118-73950a1cb3c8.jpg?resize=300%2C450&ssl=1)
もうひとつ思い出すのは、
旧ソ連の話です。
崩壊前夜の1980年代。
計画経済の失敗で、
お店の棚は空っぽ。
いくらお金を持っていても、
買えるものがない。
品物を手に入れるには、
店頭にいつ並ぶか察知する情報網と、
長~い行列に並べる体力と時間が必要だった、と。
ロシアは今日も荒れ模様 (講談社文庫) [ 米原 万里 ]人脈とか、
善意とか、
ボランティアとか
そういうものも悪くないです。
でも、
それは、
ちょっと状況や風向きが変われば、
もしくは、
登場人物が誰なのかで、
簡単にご破算になってしまいます。
その気になれば、
お金が役に立ってくれる世界で、
ホント、私は暮らせてよかった。
だいたいのことを、
お金で解決できるって、
優しい世界だと思うのです。