こんにちは、しゅりです。
「人生会議」のポスター、話題になっていますね。
がん患者関連団体からは、デリカシーがないとの批判が上がっていますし、様々な立場の人がいろんな意見を述べています。
ご存じでない方は、下記の記事をどうぞ。
そして話題のポスターがこちら↓
人生会議とは、 アドバンスド・ケア・プランニング(ACP) の愛称として、厚生労働省が考えた言葉ですね。
で、これが厚生労働省が作成したアドバンスド・ケア・プランニング(ACP)のご案内です。
自らが望む人生の最終段階における医療・ケアについて、前もって考え、
医療・ケアチーム等と繰り返し話し合い共有する取組を「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」と呼びます。
(厚生労働省より)
例えば、
「こんな療養生活を送りたい(病院・ホスピス・自宅など)」
「終末期になったら、苦痛緩和を優先してほしい(あるいは、最後の瞬間まで、濃厚に医療を受けたい)」
意識がなくなったり、物理的に話ができなくなったり、理解する力が衰える前に、身近な人や医療者(かかりつけの医師や看護師など)と話し合いを始めましょう、ということです。
そしてもうひとつのポイントは、話し合いは何度も繰り返すし、考えは変わってもイイということ。
ですが、もちろん病状を聞きたくない・知りたくない・考えたくない方もいます。
ただ気をつけなきゃと思うのが、「ACPを知っていて」聞きたくないのかどうか、です。
一度考えを決めたら、もう変えられないとか、止めたいと言い出せないと話される患者さんをいっぱいみかけるので。
その「知る」というきっかけ、窓口が広いほどいいし、話題にならないと窓口って広がらないと思うのです。
今回の厚労省のポスター、ホントにそんなにダメ?
私は、作って良かったんじゃない?と感じています。
がん患者関連の団体がいち早く話題にしましたが(否定的な声明ですけども)、それによってマスコミも取り上げましたし。
もっといろんな立場の意見が出るといいなと思います。
ちなみに、このポスターには、「がん患者」とは、ひとことも書いていません。
なかなかトリッキーというか、キャッチーというか、ミスリードをあえて誘っているのか、ねえ。
厚労省の真意はわかりませんが、作成の担当現場では、炎上も想定内なのかもしれませんね。
もうひとつ気になったこと。
ポスターでは明らかに終末期をイメージさせる絵柄ですが、実際のACPはちょっと違いますね。
元気なころ、あるいは病気になってすぐのころから始めるのがお勧めです。
ちなみに私は、ぱっと見たとき、末期心不全の患者さんを想起しました。
だんだんと長い時間をかけて、段階的に病状が悪化していく末期心不全。
すごくACPが有用だと思うのです。
「辛い」ってどんなことか
話題を少し変えます。
辛さをひとことで定義することって、意外と難しいと思うのです。
採血結果のような客観的な数字で計測することもできないし、他人からしたらたいしたことなくても、本人は重大事と考えていたり。
最近の研修でいいなと思った考え方は、「理想と現実の乖離している部分=辛いこと」という考え方です。
例えば、90歳のおばあちゃん。
歩行器を押せば、短距離なら歩けるとします。
高齢だし、それだけ歩ければ立派ですね、すご~い(*’▽’)、なんて周囲は本人に言うわけです。
でも、本人は「辛い」
なぜなら、歩行器みたいな「かっこ悪いもの」使わないで、ひとりで歩いて外出したいから。
つい最近まで、歩けていたような気がするから。
理想通りにいかない現実→辛い、のです。
他人がどう思うとか、客観的な事実がどうなのか、ではないのです。
あのポスターの患者さん、「現状は理想と全然違う、辛い」って言うこともままならないんですね。
おもしろいことを言って、みんなを笑わせようって仕事をしていたひと、あの状況はなおさら辛いだろうなぁって。
不謹慎だとの意見も見かけましたが、お笑い芸人を題材にしたこと、わかりやすいし、そんな悪くないと思うのです。
今回の件を含め、終末期について考える機会が多いほど患者さんの利益になるのが、私の実感です(病院勤務の中で)。
あっという間に鎮火されるのではなく、もう少し議論が盛り上がるといいなと思います。
死ぬことだけは、どんなひとにも平等に訪れるますものね。