タカハシさん(仮名)の話をします。
総合病院に勤めていたころ、10年近く前のことです。
色白で、
たれ目で、
化粧をしなくても、
ふんわりとキレイな人でした。
婦人科系のがんで入院していましたが、
重度の糖尿病が発覚し、
術前コントロールで内科に来た患者さんです。
※糖尿病は血管をもろくするので、
血糖値が安定しないと、手術が難しいのです。
さて。
糖尿病が進行すると、
感覚障害が出ます。
痛みも、触覚もわからなくなるのです。
足先が壊死(腐ってくる)しても、
患者さんは「痛くない」なんてこともあります。
タカハシさんも、
感覚障害でして、
あるとき膀胱が破裂したときも、
身体の中で、何かがバンッてはじけたけど、
全然痛くなかったわ~(*’▽’)
豪快に笑った、こんな人です。
退院支援でご自宅にお伺いすれば、
床からキノコが生えていました。
ご夫婦で事業をたたんで、
借金まみれで、
債務整理もしました。
ダンナさんは行方不明になり、
ひとり息子は、
絵にかいたようなぼんくら ぼんやりさんで、
働いたり、働いてなかったりでした。
2年余りで生活が激変したはずですが、
でも、タカハシさんは、
タカハシさんでした。
にこっと笑って入院して、
やれやれだわ~(*’▽’)と言って退院していきました。
あのね、と
最後の入院のとき、
タカハシさんが言いました。
あなたは想像もつかないかもしれないけど、
40代はすぐだし、
がんにだって、なるよ
タカハシさんは、50代半ばでしょ(@_@)
当時30代になったばかりの私は言い返しました。
あはは、
40代に見えるかと思って~(*^▽^*)
タカハシさんは笑ってましたね。
この入院中に、大学病院へ転院して、
タカハシさんとは、
それきりです。
すぐだよ~と言われた40代ですが、
ホントにすぐでした。
自分に残っている時間だって、
無限じゃない、と思うのです。